抜け殻

 

 

私が明菜ちゃんを教えたあの日以来君は明菜ちゃんを好きになって、今もずっと好きでいて、私よりもそれは大事に明菜ちゃんを聴いていて、愛していて、そんな時間に相見える度に、未だ君の中の腰掛けに私が座っていた跡が、薄く残っているかのような、馬鹿げた勘違い、勘違いだって分かっているから、虚しくて、辛くなるだけで

明菜ちゃんのこと、君と話せる未来はもう無い

君はもう、私の抜け殻に用は無い

君の抜け殻を、私はなんだか、まだ宝物みたいに、小さな箱にひっそりしまっていることを、君が知ることだって決して無い

 

蝉はその命を、一夏かけて声高に鳴くことができるけれど

残された抜け殻に、誰か私を見つけてくれと、叫びを届ける声は無い